ドリーム小説
 やあ。毎度おなじみのです。とまあ、分かり切っていることを言ってる場合ではないので割愛する。
 アルバートのオッサンが本格的に執事育成に取り組み始めたことで、俺一人で跡部家の執事業をこなすようになった今日この頃。景吾坊ちゃんに仕える日々は本当に楽しい。というか癒される。坊ちゃんも俺を頼りにしてくれて、凄く充実しているのだ。これが、日本にいる友人がいつか言っていた『リア充』ってやつなのかもしれない。
なーんて、思ってたのにだよ。
 こんな急展開ってないよ。青天の霹靂ってまさにこれだよ。だって順調に主従関係を築いていると思ってたんだよ俺は。──そう、俺は、な。
 それが妄想だと知ったのは一昨日のこと。大旦那様、つまり景吾坊ちゃんのお爺様である跡部グループ社長──(ちなみに旦那様は副社長だ)──の還暦祝いパーティーの時だった。
 一体何をやらかしてしまったのか心当たりが全くないのだが、パーティの翌日から景吾坊ちゃんが一言も口をきいてくれなくなったのだよ。その時の俺の動揺ったら。いつものツンデレかと思いきや、まさかの絶交状態だよ。いや違うんだ俺も聞いたんだぞ? 俺が何か気に触ることをしてしまったんなら謝るしってさ。
 そうしたら景吾坊ちゃんが、自分の胸に手をあててよく考えてみろ! って。まさか……景吾坊ちゃんのあまりの可愛さにやられている俺の動悸がバレて……。もしくは無意識のうちにデススマイルを見せてしまったとか。え、じゃあなに。俺まさかの気持ち悪がられてる?
 すまん。泣いてもいいか。







 2日前 東京都某所
 日本にある跡部家本邸で催されることになった還暦お祝いパーティー。
イギリスの旦那様夫妻の家も相当なデカさなのだが、本邸はその上をいく絢爛豪華さだった。日本に宮殿なんかあったっけ? と思ったもんな。そりゃあ俺だって、聞いていた地名や近所の様子からして裕福な家庭が集まっているんだろうなとは思ってたよ? 実際、前の職場で何度か担当した人も、この地区に住んでいる。
 だが、この日本の敷地面積を甚だ無視している家なんぞ、あっていいのだろうか。冗談抜きで別世界だ。景観の問題とか大丈夫なのかこれ。いや、不快感はないけれども……限度とか節度とかさあ……。
 門から玄関までの距離はイギリスの邸宅の倍はあるし、両サイドはシンメトリーになっていて緑の垣根が……あ、彫刻もある。この先には噴水があって、そこを迂回してようやく玄関前に到着した。
 そう、玄関ではなく玄関前だ。目の前に佇むのは、ここで王朝でも繁栄しているのかと思わせるような宮殿。宮殿風ではなく宮殿だ。こんなに広いとは聞いてなかったぞ。これは本邸の警備の人達といろいろ打ち合わせをしておかねば。


 ということで。景吾坊ちゃんが家族で団欒している間、護衛可能な部下──(といっても本来は景吾坊ちゃん専属運転手だが)──に坊ちゃんの側にいるよう指示して、俺はこの跡部家本邸の警備の人たちと打ち合わせをした。
 見取り図や設計の諸々、カメラの配置、避難通路などを頭に叩き込み、邸内を含めた敷地内を回ってチェック。スゲー広いんですけど。アレだな、こういう時に何かしらの特殊能力があったら便利そうだよな。某少年漫画みたいに、オーラ広げて周辺を探ったりとか出来たらイイよねマジで。
 しかしまあ、そんなことを言っても仕方ないので真面目に最後まで回り切って、全てを把握してから景吾坊ちゃんのいる場所まで戻った。
 おお、さすがは作りが良い。音一つ立たないぞこのドア。イイ素材使ってるな。品のある繊細な装飾も凄いし、匠の技というやつか。
 内心でそんなことを呟きながら、音を立てず部屋に入り、坊ちゃんの側に控えているミカエルに近付いた。俺に気付いている様子がなかったので軽く肩を叩いてやると、目礼をして自分の持ち場に戻っていった。
 彼も専属だけあって、この家周辺の地理などは頭に入っているだろうから、ほとんど待機のようなものだが。ミカエルは実はスペックが高い。ただの運転手ではなく、車以外にもヘリやセスナなども操縦できる。腕っぷしは他の運転手に比べれば上等といったところだ。俺に比べればまだまだだが、筋は良い。
 それについては俺が直々に指導中なので、というか、実はそのために俺の部下というポジションになっている男だ。
「おお、そういえば景吾に執事を付けたと言っておったな」
 大旦那様の目が俺に向き、次いで景吾坊ちゃんが振り返った。僅かに目を見開いているところを見ると、俺がミカエルと交代したことに気付いてなかったのだろう。
 まあ、一番気付きやすい位置に座っている大旦那様が今やっと気付いたくらいだからな。少しムッとした顔で見上げてくる坊ちゃんを見つめ返すと、不意に大旦那様が首を傾げた。
「なんだ、仲が悪いのか?」
「はは、まさか。その逆ですよ。大方、が何も言わずミカエルを付けてどこかに消えたのが気に入らないんでしょう。景吾は拗ねているんですよ」
「ほう。そうなのか、景吾」
「違います!!」
 ガ───ン!! 即答アンド全否定!? ダメだ俺立ち直れねえ……。旦那様の言葉を聞いて期待しまくって舞い上がりかけていただけに。思わぬ墜落事故発生だ。
 そんな俺の心境などお構いなしに、クスクスと柔らかい声が広がった。
「また、そのような心にもないことを。素直にならないとに嫌われてしまいますよ」
 いやいやそんなこと有り得ませんよ奥様。寧ろ素直になり切れない景吾坊ちゃんは俺の癒しです。ツンデレ万歳です。嫌いになるなんてとんでもない。一生をかけてお仕えしたいくらいですが如何でしょう。
「そういえば、名前を聞いていなかったな。というのかね。しかし、また随分と若い執事だな」
 うーん。なんだろうなこれ。頭のてっぺんから爪先までじっくり観察するように見られているのだが。さては景吾坊ちゃんに相応しいかどうか見定める気だな。そうだろう? この値踏みするような視線、絶対にそうに違いない。受けて立とうじゃねえか、アーン!
と申します。今年で26になります」
「ほう……」
 大旦那様は一言だけ唸るように呟いて俺を見つめる。もちろん俺も見つめ返す。俺は基本的にペラペラ喋る性質ではないので黙っているだけなのだが。いや心の中ではこんな調子ですけれども。
 そうして互いに視線を外さぬまま暫し、ついに大旦那様が目を逸らした。フッ、勝ったな。この、伊達にアルバートのオッサンとやり合ってねーよ?
「頭だけの若造かと思いきや、なかなか肝の据わった奴だ。アルバートが目を付けただけのことはある」
「本当に。景吾もすっかり懐いて」
「だっ、だからそれは!」
「おや、なんだい?」
「べつに!」
 あー、旦那様ったら完全にからかって遊んでんな。しかもナチュラルに景吾坊ちゃんがツンデレモードだし。頬膨らませてプイってしたし。いつもの如くすげー可愛いしマジ天使。でもやり過ぎないで下さいよ。景吾坊ちゃんは一度拗ねるとフォロー大変なんだから。
「旦那様」
「わかった、わかった。そう怖い顔をするな」
 怖い顔をした覚えはありませんが、景吾坊ちゃんが旦那様の意図に気付いたみたいなんですが。からかわれたって気付いちゃったみたいなんで、この辺で部屋に下がってもいいかな。
!」
 ハイハーイ。どこまでもお供させて頂きますよーって、こらこら廊下は走っちゃダメだぞ。
「あっ……」
 ほらつまづいた。まあ、足元に犬がじゃれついてきたらバランス崩すわな。ご主人様をみすみす転がしたりしませんがね!
「大丈夫ですか?」
「い、今のはコイツが」
 そうだな。マルガレーテがじゃれついてきたから避けようとしてバランス崩したんだもんな。この子もなんで子犬なのにデカいんだ。キミも嬉しいからってご主人様の邪魔しちゃダメだぞ。め!
「……急に大人しくなったな」
あっはっは。そんなに恐がらなくても、ちゃんと躾けられてるから跳びかかったりはしないぞ。そして大人しくなったのは動物の性というものですよ坊ちゃん。俺は打ち合わせの前に少しだけこの子と会っていたから、既に上下関係が成り立っているのです。
 とはいっても大きいだけに子供からしたら少し怖いか。景吾坊ちゃんは、じっと見つめてくるマルガレーテを警戒しているのか、支えるように回していた俺の腕に掴まってきた。
 無意識なんだろうか、ギュッと手に力がこもったのを感じて、俺はその体ごと掬い上げるように抱えた。
「あ、おいっ」
 慌てて身じろぎする景吾坊ちゃんに「何でしょう」と返しながら、安定させるために上体を高くした。
「おろせ!」
 すぐ近くにある顔は本当に焦っているようで、横抱きなのが気に入らないのか、或いは七歳にもなって抱えられるのが耐えられないのか、必死に離れようとしている。どちらにせよ恥ずかしいという気持ちがあるんだろうけども。少し気は引けるが、悪戯をしてみようか。
「自分で歩ける!」
「左様でございますか。では……」
 抱えたままゆっくりと腰を屈めていけば、そこには俺に付いて来ようとしていたマルガレーテがいるわけで。
「……!!」
 それに気付いた景吾坊ちゃんは、たちまち俺にしがみ付いた。こうなれば『抱っこ』をしているようなものだ。
 取り敢えず、さっきまで団欒をしていた部屋のドア付近に、おやおやまあまあ、と我が子または孫を見つめる姿があることは内緒にしておこうか。
 マルガレーテは俺が止まったこともあり、お座り状態で大人しく待っているだけなのに、景吾坊ちゃんは動物に慣れていないのか、いつもの坊ちゃんらしさがない。ていうか犬でこれなら馬とか大丈夫なのだろうか。
 この間、奥様が「景吾が馬に乗ったら本当に王子様みたいよね。やっぱり白馬かしら。でも黒毛の馬も似合うわね」なんて話を旦那様にしていたから、きっとそのうち馬と対面することになるんだぜ。だって俺、旦那様からさっそく手配するように言われたし。まあ、今すぐどうこうって訳にはいかねーから、忽ち心配することもないけど。
 馬に乗って華麗に走る息子を見てみたいとか言われたら、叶えちゃうもんな旦那様。あの2人って常に新婚気分だから。俺がそこにいるのに抱き合うわ濃厚なキスはするわ。お姫様抱っこで寝室へ入っていった彼らがやることなんて一つしかないから、溜め息混じりにその場を去りましたよええ書類には俺が目を通す羽目になりましたよ。
 なんという自由恋愛バカップルだ。フリーダム過ぎる。
 そんなことを考えていると、さっきよりも更に強くしがみ付いてくる手を感じて、思考に耽っている場合ではなかった、と何食わぬ顔をして我に返った。景吾坊ちゃんを抱え直して、完全に抱っこ状態になったところでご主人様の言葉を待つ。
 すると、たっぷりと沈黙を挟んで、ようやく口を開いた。
「…………このまま連れていけ」
「畏まりました」
 それはそれは不本意そうに呟かれた指示に、内心で喜びながら答える。こうして抱っこするのも久しぶりだなぁ。景吾坊ちゃんったらスクスク成長しちゃうんだもんなぁ。
「……は、やっぱり時々いじわるだな」
 確かに今のは意図して意地悪しました。ごめんな。でもその『やっぱり』って何だい。まるで俺がしょっちゅう意地悪してるみたいじゃないか。
「左様でございますか」
「今日は一段といじわるだ。あと、そういう返し方もいじわるだ」
 えー、マジで? そう言われてもなぁ。こういう答え方が一番俺の性に合っているというか、言葉遣いは兎も角、わりと素の対応なんだが。
「おい! 聞いているのか!」
「聞いておりますよ」
 ちゃんと聞いてるから、ちょっと暴れるのやめようか。

 以上、回想終了。
 そう、あの時はただ拗ねていただけで本当にいつも通りだったんだよ。パーティー用の服に着替える時にはもう機嫌は直ってたし、マルガレーテにも慣れ始めていた。あの子は賢いから、自分よりも『上』である俺が景吾坊ちゃんの世話をしているのを見て本能的に悟ったのかもしれない。
 それはいいんだ。景吾坊ちゃんが犬と戯れる姿にはマジで癒されたし。問題はパーティーが始まってからなんだよな。それは分かっているんだ。
 ──マジで一体なにやったんだ、俺。
 パーティーが終わったからといって直ぐにイギリスに帰ることはなく、俺たちはまだ東京の本邸に滞在している。といっても明日には帰るのだが。
 遅めの夕食を取り、自分に割り当てられた部屋に戻って小一時間。あの日の自分の行動を思い返してみたが、これといって何も原因が思いつかないまま今に至る。
 今までだって別に景吾坊ちゃんとはすごくよく喋ってたわけじゃねえよ? ぶっちゃけ、用件がなければ滅多に俺からは話し掛けたりしないし。景吾坊ちゃんから話し掛けてこない限り、何もなければ側に控えているか雑務をしているかだ。 「……寝るか」
 取り敢えず1日空けたことだし、そろそろ景吾坊ちゃんと話し合うことにして今は寝よう。睡眠不足で仕事に支障をきたす、なんてことにならないようにせねば。そんなことを考えながら、電気を消してベッドに入った。  そうして瞼を下ろし、静まり返った中で徐々に眠気に誘われてきた時、意識が浮上した。
「……」
 布団に潜ったままで耳を澄ませてみたが、特に何か聞こえてくるわけでもなく、相変わらず静かだ。俺が身じろぎする度にでる衣擦れの音と、秒針が時を刻む音くらいしかしない。
 起き上がって窓から外を窺うも、特に変わった様子もなく風もないし穏やかな夜だった。何かあったなら俺にも連絡が来るはずだしな。
 一人ごちてみたが、どうにも気になるので邸内を見回りに行ってみるかと思い立った時、内線が鳴った。

「景吾様が誘拐された?」
『は、はい。屋敷内に潜んでいたようです』
 な、ん、だ、と───!? つーか何でミカエルが連絡してくるんだ。警備の奴らは……あ、そう、眠らされたのかい。
 それにしても、おかしいな。俺は隈なくチェックしたんだぞ。いつ紛れ込みやがった。使用人の中にでも混ざってやがったのか? いや、使用人・警備員・運転手・賓客付きの護衛すべて顔と名前は一致していたし妙な行動をしている奴もいなかった。
 パーティーを終えれば速やかに帰っていったし出入りの人数も合っていた。
つーかなんで今頃になって誘拐。一昨日・昨日紛れた侵入者が見つからないままってのも変だしな。
 景吾坊ちゃんが一人になるところを狙ってたとしても……あ、そういや俺、昨日は景吾坊ちゃんの部屋で寝たんだった。
 1日中スルーされてたから寝顔だけでもと思って様子を見に行ったんだよ。そうしたらだよ。掛け布団を直した拍子に俺の服掴んで離さないもんだからさ。まあ、朝にはそ知らぬふりで「お早うございます」と言ったがね。返してくれなかったけども。

「すぐに行く。一応、発信機を調べておけ。屋敷内に留まっていなければ景吾様の行方に繋がる」
『は! ただいま』
 侵入者なんて論外だろうし、業者にでも扮装したのか? 俺が景吾坊ちゃんについている間はミカエルにチェック任せてたからな……。カメラの死角ついて庭にでも潜んでたか?
 金銭目的か怨恨か。しかし仮にも『跡部』の一人息子を誘拐するくらいだ、怨恨による線が高いが、社会的地位を失った者なら金銭も要求してくるだろう。目的を果たした後に景吾坊ちゃんを解放するがどうかは五分五分だが、やけに手際がいい。
 銃持ってんじゃねーの? 警備の奴らを眠らせて脱出したことといい、素人ではないだろう。ミカエルが直ぐに持ち直したのは不幸中の幸いだな。まあ、アッサリやられたのは残念ではあるが、それについては後日お仕置きするとして。
 まったく、日本はいつからこんなに物騒になったのか。
、準備できたよ」
 その声に答えて車に乗り込む。え? こいつらは誰かって? 昔の同僚さ。警察よりも信用できる奴らだから、こういう時には重宝するのだよ。手口から見て一人で計画実行とか、明らかに無理があるだろ。念のために前の職場の知り合いに連絡して諸々の手配とか協力してもらったのさ。
 うーん、発信機が示している場所は郊外か。景吾坊ちゃん、夜中なのになんで万年筆持ってたんだろうな。まさか俺が仕込んでいた超小型発信機に気付いて……は、ないか。うん、さすがにそれは無いな。
様。たった今、犯人から身代金の要求がありました』
「そうか」
 ミカエルの話では、今のところ景吾坊ちゃんは無事らしい。金額はまあ、跡部グループに要求するには妥当と言える額だった。
 急な事態に取り乱していた奥様は旦那様に任せて、俺は集めた助っ人と共に犯人たちがいるだろう場所へ向かう。さあ、景吾坊ちゃんを返してもらおうか。動機は何にせよ、俺のご主人様を攫ったんだ。それ相応の覚悟はできてんだろうなァ、犯人さんよお。
 地獄を見せてやるぜ!! Yaaaーha!!


 車をアジトらしき建物から離れた場所に停め、あとは自分の足で行動。
 夜隠に乗じて近付き、先ずは見張り番よろしく上から獲物を狙っている奴を片付ける。最小限の動きで全てを運び、建物の中を窺うと、そこには男が3人に女が一人。外にいた奴を合わせれば6人か。一人は後ろ手に拘束されている景吾坊ちゃんを捕まえていて、もう一人はブツブツと何かを話しているが、その手には拳銃だと分かる鈍い黒塊。
 よし、では作戦開始!!
 インカムを通して合図をして突入。気持ちいいくらいにイイ反応をする犯人たちに喋る間もなく一撃を食らわせながら、景吾坊ちゃんを捉えている奴めがけて突き進む。
 ははっ。灯り消して真っ暗闇にしたって効かないぞ。こっちもそれ相応の準備整えてきてんだからさ。
「ぐッ!!」
 迫る俺から逃げようとした男の前に回り、先ずは軽く一発食らわせる。言葉どころか銃の引き金さえ引かせぬ速さで再び一撃を食らわせ、事態に困惑しながらも助けにきたことを理解したのか、景吾坊ちゃんと視線が交錯した。
ッ……!」
「遅くなりました。もう心配はいりませよ」
 その小さな体を片腕で抱き込み、体勢を崩しながらも発砲しようとしている犯人の手を目掛けて先手を打つ。さっきから何度か響いている乾いた音に、景吾坊ちゃんが怯えているのが分かる。もー、俺の一撃食らってガタガタなのに無理して拳銃ぶっ放すから煩くて仕方ないな。
 でもアイツらは俺の仲間が捕まえてるし、もう大丈夫だぞ。ホントごめんなぁ。ちょっとシリアス過ぎるよな。あ、そうだよ。これでトラウマになったりしたらヤバくね?
「クソがッ……!」
 おーおー、まだ悪態を吐けるか。威勢だけはいいな。もう一発キメて肋骨の1本2本折ってやりたいところだが、これ以上やって俺の可愛いご主人様が心的外傷でも負ったら大変だから、特撮のノリで眠らせてやる。
 そんなことを考えていたら、おそらくリーダーだろうと思われる男がタイミングよく顔を上げた。フッ……何者だテメエ、といったところか。
 クックックッ……ファーッハッハッハッハ!
 そうだよ! (←?)
 この俺こそが跡部家執事、様だァ!!


2012.11.21 修正 inserted by FC2 system

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